
洗い張り

洗い張りとは
着物を解いて反物の状態に戻して洗剤で水洗いをして、湯のしや反物の幅を整えることを洗い張りといいます。
着物は解いて水洗い(洗い張り)をすることで絹特有の風合い・光沢が蘇り、絹の心地よい肌ざわりを実感でき、着用が一段と楽しめます。
洗い張りは、一度着物を解いてから洗う工程のため、再度仕立てなければならないこともあり、加工代としては高価になります。
しかし、寸法替えで着物を甦らせるためには、洗い張りをされることをお勧めします。洗い張りをすることで反物の折れ筋が消えるため、仕立て直すことができます。
また、仕立て直す際に、寸法を変えたり、古くなった裏地を変えたり、八掛の色を変えて着物の雰囲気を変えたりすることもできます。
洗い張りをすれば、柄によっては生地の前後左右を入れ替えたり、紬などは裏表を逆にすることもます。着物は高価なものですが、こうして何度も息を吹き返しながら、丁寧に使われています。


サスティナブル
sustainable
タンスの中の古いキモノを布で再利用
着心地がいい理由1
オゾン水を使った洗い
除菌、抗菌などでも話題のオゾン水。当社は着物クリーニングにおいて「オゾン水生成器」を使い、洗いの工程でオゾン水洗浄を行っております。
オゾン水は殺菌力が高く、殺菌できる微生物の幅広さはもちろん、強力な脱臭力も特徴です。
またオゾン水は、アルコールの7倍以上の殺菌力があります。
オゾンの溶存濃度1.0ppm以上のオゾン水は、ほとんどの細菌やウイルスを死滅させることが可能です。
オゾン水に含まれるオゾンは、5分程度で分解され酸素に変わるため、無害で安全性が高いのです。洗剤などによる除菌ではないため環境にも優しいということで、多くの医療機関での洗浄方法としても採用されています。
オゾン水生成器と聞くと、最新の洗浄方法に思われそうですが、実はオゾンは、昔から染織の世界で利用されてきました。雪晒し・海晒しはオゾンを利用した漂白・除菌・消臭方法です。また、麻・綿には漂白・除菌・消臭の効果があり、絹は除菌・消臭効果が期待されます。

オゾン水による殺菌効果
(厚生労働省予防衛生研究所データ)

着心地がいい理由2
洗い張りの「張り」をしない
貫八(カンパチ)という言葉をご存じでしょうか?
白生地は、昔も今も重い生地が良い生地と言われています。白生地の表地(三丈物)の重さが680g(反物の端にハンコで表記して有ります)として、10反集め3.75㎏(一貫)で割ると、約1貫813匁(もんめ)1貫を省略して貫八と呼び、良い生地ですよ!と言っていました。
昔は、貫七・貫六の生地があったりして、貫六などは結構薄く(軽く)感じました。この様な生地は、洗い張りをした後に糊(ふのり)を入れてシャキッとさせました。旅館の布団シーツや浴衣のようなイメージです。
しかし昨今は、着物の販売量の減少と共に高級化が進み、重い生地が普通になり、糊をいれなくてもしっかりとした風合いと着心地が保てるようになりました。
生糸の断面図を見ると繊維質のフィブロインの周りを膠質のセリシンで覆われています。

白生地は、生糸に撚糸(撚り)をかけて織り上げた反物を精練、セリシンを除去して絹の白生地になります。紬は、糸を染める時にセリシンを除去して染めますが、この状態で織ると毛羽立ちが出たりする為、染めた糸にふのりを付けて織ります。容易に想像できるかと思いますが、ふのりを付けることで、生地は固くなります。
ふのりは、織りの工程では必要でも最終的に不要なので、湯通しで取り除き絹の風合いを取り戻します。白生地には無く紬だけ湯通しの作業が発生します。湯通しをしないで、お仕立て上がっていると思われる着物を見かける事もございますが、その際はカビの発生が多いように思われます。
カビの発生する原因
お着物にカビが発生する条件は、以下の4つの要素がそろったときに起こります。
温度 / 湿度 / 栄養 / 酸素
勿論、絹も高タンパク質で栄養は十分ですが、洗い張り後、ふのりで張りをすることでカビ菌の培地を作り、カビの発生率を高くしてしまうことが考えられます。
以上の理由から当社は張りを行っておりませんが、張りのパリッとした感じが好きと言う方ももちろんいらっしゃいます。ご希望の方は、依頼伝票にメモをして下さい。
